暖 房 の 考 え 方

暑さ寒さの感じ方には

個人差や年齢差があることを

よく理解してから

計画しましょう

 暑さ寒さにかかわることは、個人差があるので建築的にも大変難しいことです。
 若い人とお年寄り、女性と男性、暑がりの人と寒がりの人では感じ方は全く異なると言ってよいでしょう。

 全館暖房が提唱され各フランチャイズ工法・ハウスメーカーとも実践しています。
 集中制御リモコンの設定温度だけで全ての部屋の温度設定をすることは一聞するととても快適そうですが、感じ方には個人差があるため時として不快になってしまう場合も多いと思います。


 当事務所でも全館暖房は行っていますが、次の点に注意して暖房方式を提案しています。
 まず、直接温風を吹き出す方式ではなくやんわりと室内を暖める輻射方式であること。
 次に、各端末暖房機または部屋ごとに温度が制御できるマニュアル的な方式であることです。
 はじめはランニングコストの安価な灯油式ボイラーとしておき将来的には電気式ボイラーに変えたい、などの熱源変更に対応可能でシンプルなシステムを採用するようにしています。


 今でこそ外気温に対して要塞のような装備をした住宅はディファクトスタンダードとなっていますが、私やご年配の方の小さいときなどは断熱もなく隙間風の吹く住宅で育てられてきて何の障害もなく健康で元気に大きくなってきています。
 一年中一定の温度に保たれた室内で育てられた子供は体が弱くなってしまうという学説もあります。
 もちろん、現代で隙間だらけの住宅を建てることは許されませんが、設計をするときにはそんな話しも交えながら建主さんに暖房方式の説明を行っています。


 暖房といえば床暖房を希望される方も多いと思います。冬の平均気温が10℃前後の温暖地では主暖房として機能できますが、当事務所のある長野県などの寒冷地(冬の平均気温0℃前後)では床暖房のみで寒さをしのぐのは事実上不可能で、必ずそれ以外の暖房機器(エアコンやファンヒーターなど)が必要となります。
 寒冷地では「冬いかに寒くないようにするか」が住宅設計の最も重要な課題の一つですから、温暖地で見かける「床暖房+エアコン」やオール電化の推奨する「蓄熱式温風器」ですら、快適な環境をつくりだしてくれるのか、やや疑問を感じずにはいられません。

 通年をとおして快適に過ごせる室内環境のためには、過度な冷暖房方式のみに頼るのではなく、基礎部分と建物の断熱性能、通風や採光を考えた窓の大きさと配置、などの建築的な要素と合わせて総合的に計画しておくことが大切でしょう。