り 壁(外壁材)

1ー1. 木摺+ラスモルタル下地の湿式工法

モルタル下地+しっくい塗り

1ー2. ノンクラック専用ラスモルタル下地の湿式工法

モルタル下地+高耐候性アクリルシリコン樹脂塗装

2. 大判サイディング下地の乾式工法

サイディング下地+左官材塗り

 外壁はサイディングではなく、しっとりと落ち着いた雰囲気にしたい、という「左官塗り壁」の人気には普遍的なものがあるようです。
 せっかく塗り壁を使うのであれば「昔のモルタル壁に見られる(ヒビ割れ誘発用の)縦目地はなくしたい」と思う方がほとんどで、それを実現させることにこそ、デザインセンスと設計力が問われます。
 塗り壁の下地工法としては、大別して「水を使う湿式工法」と「使わない乾式工法」の2種類があり、特徴をよくご理解いただいた上で選択することが最良でしょう。


1.ラスモルタル下地の湿式工法
 湿式工法を採用する場合「モルタルには極小さなヒビが必ず入る」という材料の特性を、建主さんが十分にご理解いただくことが必要不可欠です。
 従来の木摺+防水紙+ラス網下地の湿式モルタル工法(写真1ー1)においても、ラス網の工夫やグラスファイバーメッシュ+樹脂モルタルを併用し腕の良い左官職が丁寧な施工をすることで、縦目地のない平滑な外壁は可能です。
 ヒビ割れ保証付きノンクラック左官工法(写真1ー2)などでは専用の防水紙付きラス網、軽量モルタル、ファイバーメッシュを使うことで、微細なヒビ割れの心配も軽減できます。
 モルタル塗りは、水分蒸発の早い真夏や乾燥前に水分凍結の恐れがある真冬を避け、陽気を慎重に見極めて適切な養生をしながら施工することも重要となります。

 仕上げは「しっくい」をはじめとしてマジックコートやジョリパットに代表される左官材・吹付け材・塗装材から予算と好みに合わせた選択が可能で、材種・色・ツヤ・模様付けなどで多種多様な陰影と表情を生み出せることが大きな魅力でしょう。
 数センチ角の小さなサンプル見本での色決めは失敗する例が数多く見受けられますので、60cm角くらいのサンプルを用意してイメージに合わせた慎重な選択をしたいところです。



2.大判サイディング下地の乾式工法
 1平米あたりの単価は1〜2万円と高価で、採用にあたっては他の部位とのコストバランスを慎重に考える必要はありますが、大判サイディングを下地に使用する乾式の塗り壁工法も近年普及してきました。
 サイディングの継目部分を伸縮性のあるメッシュ+パテ材で平らにならしてから仕上げを施しますので、タテヨコに全く目地のない外壁が可能となります。
 乾式工法ではヒビ割れの心配はほぼ皆無となりますが、サイディングの種類によって仕上材料が限定されてしまう自由度の低さがややネック(これによってヒビ割れ保証をしています)で、継目処理を怠るとその部分が波打って見えることがあるため施工には熟練の技術と丁寧さが求められます。



 どちらの方法にしても、独特の趣きある表情とは裏腹に「塗り壁」は汚れが目立ちやすく、長期的には塗り替えや補修などのメンテナンスが伴いますので、あらかじめ防汚性のある左官材や塗料を選んでおくことも大切です。




 実例の「ピアノハウス」「ツカズハナレズノイエ」では在来湿式モルタル下地のしっくい塗り、
 「遠望のカゴ」では在来湿式モルタル下地の高耐候性樹脂塗装、
 「WH 〜WAndering House」ではノンクラック湿式工法下地の高耐候性樹脂塗装、
 「花火を臨む家」「風洞の家」では乾式サイディング下地の左官材塗り、
 をそれぞれ使用しています。